新入社員の丸山(宏)です

Hiroshi Maruyama

2016-04-12 14:16:47

新入社員の丸山(宏)です。4/1に入社してから、一週間が経ちました。PFNにはもう一人先輩社員の丸山さんがいて、なのでもう先生ではないですが、「まるやませんせい」と社内で呼ばれたりもしています。

今回の転職は私にとっては3回めの転職になります。外資系のIBM、国内大手のキヤノン、それに政府の研究機関である統計数理研究所、それぞれに大きく環境や文化が違って、転職の度に「おおっ」と思うことがありました。PFNは4つ目の職場ですが、やはり大きく違います。なんと言っても、最大の違いは意思決定のスピードでしょう。私は入社時には「エグゼクティブ・フェロー」という肩書をいただいていましたが、翌週には「Chief Strategy Officerをやってください」、と言われてその場で肩書が変わりました。さらに、この一週間のうちに、どんどん会社の方針も変わっていくのを目の当たりにしました。大学共同利用機関法人(だいたい、国立大学と同じと思ってよいと思います)で新しいポジションを作ろうとすると、何ヶ月もかかったはずです。

PFNが現在注力している分野の一つは、製造業におけるイノベーションです。この分野は、ドイツでのIndustrie 4.0とか、米国を中心としたIndustrial Internetとか、かまびすしいです。その一方、すでに品質や生産性を極めている日本の製造業の中には、やや距離を置いて見ている方々もいるようです。製造業におけるIoTは一過性のブームなのでしょうか。それとも産業を変えていく大きな流れなのでしょうか。私がこの分野(とPFN)の可能性を感じるのは、2つの理由からです。

「製品」の価値から「製品による体験」の価値へ

1つは、「製品を作って顧客に販売する」という製造業のビジネスモデルが変化する兆しがあるからです。伝統的な製造業のビジネスモデルでは、顧客が製品から最大の価値を得るのは、たいていその製品を購入した直後です。その時には、とても欲しいと思った製品ですし、新品ですので、その製品はライフスパンの中で最大の性能を発揮しているはずです。使っているうちに、顧客の興味も変化していきますし、製品も劣化していきますので、だんだん顧客にとっての製品の価値は落ちて行くでしょう。しかし、価値の多くをソフトウェアに依存する製品ではこの限りではありません。電気自動車のテスラは、ソフトウェアのアップデートによって新しい機能が追加されたり、安全性が向上したりしています。もっと身近では、スマートフォンも、購入してからもソフトウェアの追加によって継続的に価値が向上していくタイプの製品と言えましょう。

そもそも、私たちが製品を購入するのはなぜでしょうか? その製品を通して何らかの価値ある経験をしたいからに違いありません。自動車でいうならば、その価値は移動すること、あるいは運転を楽しむことなどで表されることでしょう。だとすれば、「製品を購入する」というトランザクションももしかしたら必要ないかもしれません。最近では若者は自動車をあまり購入しないと聞きます。Uberや、TIMES24のカーシェアのように、共有経済の世界になれば、汎用のデバイスと、それをオンデマンドでカスタマイズして顧客に提供するサービスの組み合わせで、製品の価値が顧客にもたらされる世界が来るかもしれません。経済学者のジェレミー・リフキンは、その著書「限界費用ゼロ社会」の中で、IoTが真の共有化社会をもたらすのだ、ということを述べています。このような大きな変革を可能にする鍵が、IoT、すなわち情報技術なのです。

機械学習による組込み開発の半自動化

では、このようなIoTの世界をどのような技術で構築・運用していくのでしょうか。私がPFNの将来を信じるもう1つの理由は、機械学習の技術が今までのものづくりのやり方を根底から変える可能性を感じるからです。経済産業調査会「ものづくり白書」2013年版によれば、自動車のコスト構造に占めるエレクトロニクス・ソフトウェアの割合が2015年には40%にものぼるとされています。これら組込みシステムの開発の多くは現在、V字型開発モデルという、基本的にはウォーターフォール型の方式で行われます。この方式の主眼は、「作り始めてから要件の間違いが見つかるとコストが高いから、できるだけ上流できちんと考えて、後で手戻りが無いようにしよう」という考え方です。要求定義通りに正しい物を作る、という意味では、とても正しいやり方だといえます。この考え方の裏には「要求定義を厳密に定義さえすれば、それを詳細化してプログラミングすることが可能である」という本質的な仮説があります。製品が複雑化すると、ここが自明でないことがあります。

前回の自動運転のデモの記事をご覧になったでしょうか。このデモでは、要件は極めて明確です。「交差点でぶつからない車を作る」というものです。ただし、この要件を実装するうえで、V字型開発はまったくやっていないのです。要件は与えるが、その実装のやり方は、深層強化学習の仕組みが試行錯誤によって学んでいく、という方法論です。誤解を恐れずに言えば、組込み開発が自動化されているのです。これは素晴らしいことです。これからのものづくりの大きな部分を占めるソフトウェア開発が自動化されるのであれば、製造業にとってそれは大きな福音になるはずです。すべての組込み開発が機械学習に置き換わるわけではないでしょうが、これから、どんどん機械学習に基づくシステム開発が加速していくことは間違いないでしょう。

以上、2つの理由によって、今後製造業の産業構造そのものが大きく変わっていくのだと、私は信じています。その変化を、変化を起こす側から経験してみたい、それが私がPFNに来た主要な理由です。大きな夢を実現してみたいですね!

 

機械学習の経済学:クラウドはIoTの夢を見るか

hido
Chief Research Officer

2015-08-21 07:16:37

比戸です。夏の思い出、もう作りましたか?

今回はPreferred Networksのポジショントークをします。と言っても、ディープラーニングではなく、Internet of Thingsのほうです。

前回IoT関連のブログ「のび太とインターネット・オブ・シングス」を書いてから1年半弱、枯れたバズワードどころか、IoTはあらゆる業界を巻き込んだムーブメントになりつつあります。ちょうど昨日発表された、ガートナーの2015年度版ハイプサイクルでも、去年に続きハイプカーブの頂点に位置付けられていました。

IoTではコネクションとデバイスの管理、プロトコルの互換性、セキュリティについての議論が盛んですが、それは脇において、我々はいつも通りデータ解析の話をしたいと思います。 興味は「クラウドコンピューティングはIoT向けデータ解析でも唯一の主役となるのか?」です。 結論はずばり「そんなにうまくはいかないよ、特にインダストリアルな、機械学習頼みの応用ではね。」です(ほら、ポジショントークっぽくなってきた)。

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技術と時機

岡野原 大輔
リサーチャー

2014-10-21 09:55:34

2000年前後、クラウドという言葉が立ち上がった時、クラウドビジネスを立ち上げた企業の多くは失敗しました。
(例:opsware 彼らはその後システム運用ツール提供で生き残ることができました)。
クラウドという言葉はそれ以降あまり聞くことはなくなりました。2006年GoogleのErick Schmidtがクラウドという言葉を再登場させ、AmazonがAWSを提供開始します。それ移行クラウドは爆発的に普及し、ITの戦場は全てクラウドに移行しつつあります。
(IBMですら、半導体部門を売却しクラウドに移行できるかに社運をかけています link
自社運用やDC運用をしている企業もまだ多く存在しますが、パブリック・クラウドを利用している企業の競争力は増すため、今後10年ぐらいを考えるとパプリッククラウドの影響力はさらに増していくと考えられます。

IoTという言葉も1999年から存在します。私自身も何回かIoTパネルディスカッションに参加したことがありますが、皆、口を揃えて、概念は分かるが、まだ時期尚早だし、そもそもどのように儲けるのか分からないと話していました。私もその一人でした。弊社の西川も今年の講演会でIoTに注力するといった時、いまさらIoTか?と言われたといいます。
しかし今年に入りIntel, Cisco, Google, Apple, MicrosoftらITの巨人たちが急速にIoTに舵を変えてきています。この波はスマホの時と同様のものになるかもしれません。

私自身も過去に何度か「時機」というものを痛く経験しました。

2010年にPFIは電通とXappyというサービスを始めました。ウェブをザッピングして視聴するというサービスであり最適なニュースやウェブを見つけ出しすというサービスです。その当時はiphoneが普及し始め、ipadが出始めた頃で、今がタイミングだろうとサービスをローンチしました。Xappyはウェブ先読みをしたり、ニュースのコンテンツやユーザーの視聴行動を解析し(機械学習も使って)ユーザーに配信するというサービスでした。
コアなユーザーはそこそこいたが一般に普及することはなくサービスは離陸しませんでした。スマホが爆発的に普及したのはその1年後でした。一方で今のSmartNews, Gunosyはここしかないというタイミングで離陸し爆発しました。それより前、後に出たサービスはこの二社に追いつくには相当な努力が必要だと思われます(SmartNewsの浜本さんはその頃crowsnestを提供し、その後スマホ向け&マスに情報提供すべきだということでsmartnewsに舵を切ります)

ニューラルネットという技術は1960年頃からありました。しかし機械学習の世界はSVMやCRFといった”実用的”な技術が中心となりニューラルネットはどちらかというと素人が触れてはいけない技術でした。
しかし、2006年以降の深層学習の波は、機械学習の考え方をほぼ変えてしまいました。マルチタスク、マルチモーダル、スケーラビリティ、様々な部分で深層学習は既存の手法を凌駕しています。
そしてその波に乗った人たちは他の人達が追いつけないところまで進んでいます。

数年前、モバイルサービスで非常に好調な企業の方と話す機会がありました。その当時はガラケーが主流で、「スマホ対応しないんですか」と聞くと「そうだと思うんですが、今の殆どのユーザーがガラケーなので、ガラケーに注力しています。スマホのユーザーが増えてきてから考えます」と話していました。その企業はスマホの波に乗り遅れ、苦戦を強いられ続けています。

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「私達もあの技術を持っていた。技術では負けていない」
「彼らは運がよかったんだ」
「そうだとは思うんだが、今の顧客に聞くと○○なので、、」
「私達もxxを始めました」

タイミングが早すぎたか遅すぎたかどうかを見極めるのは専門家ですら困難です。しかし十分確度が高い情報を集めている間に勝負が始まることがあります。
一方で気づかないうちに勝負が始まっていることがあります。例えばAWSは、実際にビジネスを始める前に彼ら自身でAWSインフラを利用しクラウドサービスを洗練させていました。市場に投入した後、他のプレイヤーも追従したが追いつくことはできていません。また、突然成功した技術もよくよく聞いてみるとその数年前から試行錯誤していることが分かります。

まとめ

(1)時機を見極めるのは専門家でも難しい。しかし勝負をしないと舞台に上がることすらできない。

(2)成功してからの後追いは自分でゲームを変えられるぐらいでないと難しい。しかも成功している方は
100倍ぐらいの差はあっという間につけることはできる

(3)成功する時機のスイートスポットは半年〜1年である。それより前より後でも成功することは難しい

(4)一方で準備は数年前からはじめていなければならない