「コンピューターサイエンスのすべての分野に精通していること」という応募資格に込めた想い

Toru Nishikawa

2018-02-27 16:00:55

※PFNの募集要項は、本ブログの内容をふまえ、適切に意図が伝わるよう一部更新しました


PFN代表の西川です。

今回は、SNS上でもたびたび話題(炎上?)になっているPFNの応募資格について、改めてご紹介したいと思います。
PFNの採用募集ページに書かれたリサーチャーの条件には、「コンピュータサイエンスのすべての分野に精通していること」という一文があります。この条件は、PFIの時から、リサーチャーの応募資格として常に掲げてきました。

その背景にある想いは、コンピュータサイエンスの研究をする上では、一つの分野だけでなく、幅広い分野について深い知見を有することが極めて重要である、ということです。たとえば、データベースの研究をする上では、トランザクション処理の理論や関係代数について詳しく知っているだけではなく、データベースを動かすコンピュータアーキテクチャ、ストレージ、また、今では分散データベースが一般的になってきているので、コンピュータネットワークについての知見も持っていることが必要不可欠です。深層学習を研究する上では、いまや、一台のコンピュータを使って実現するだけでは競争力が持てず、効率の良い並列処理が必須です。フレームワークを作る上では、コンピュータアーキテクチャや言語処理系の仕組みを理解していることが不可欠です。ドメイン特化した言語を作るような場面では、プログラミング言語理論についての理解がなければ、建増し建築のような言語が簡単にできてしまいます。強化学習においては、シミュレーションや、レンダリングの技術を洗練させていくことも重要です。

このように、一つの分野を知っているだけではもはや強みを出すことはできない時代になってきています。どのような分野と分野を融合したら新しい技術が生み出されるのか、最初から予見するのは難しいことです。私たちには、最先端の技術を切り拓いていくミッションがあります。そのために、すべての分野へ精通するべく、技術を追求していくことが極めて重要だと考えています。

精通という日本語は、その分野について広い知識や深い理解を持つことを示しています。必ずしも、その分野のトップカンファレンスに論文を出せるということを示しているわけではありません(そのためには、知識や理解だけでなく、新しい研究をするという重要な能力が必要になります。そして、そのような能力を身につけていくことも重要だと思います)。また、すべてを知り尽くしているということを表しているわけでもありません。むしろ、すべてのことを知り尽くしていると言い切れる人は、サイエンティストではないと思います。コンピュータサイエンスは今まさに急速に発展している分野であり、その進化を常に追い求めていくことは、極めて重要な姿勢だと考えています。

時にはSNSなどで「コンピュータサイエンスのすべての分野に」という部分が、誤解されたり、面白おかしく茶化されたりするようなことも散見されますが、この応募資格に込めたメッセージは、依然としてPFNの文化を形成する上では重要なことだと思っており、変えるつもりはありません。しかし、この応募資格について、誤解を生まないような表現を新たに考えていくことも必要だと考えています。

この10年間、コンピュータサイエンスの領域も急速に広がってきています。この流れはさらに加速するでしょう。また、コンピュータサイエンスの枠にとどまらず、様々な分野を融合することによって、新しい研究分野もできてくるでしょう。ですので、次のような要素を加味して考える必要があると思います。

  • 現時点でのコンピュータサイエンスのすべての分野に詳しいということよりも(もちろん広い分野を知っていることは必要ですが)、これから生まれてくる新しい分野、コンピュータサイエンスの発展の動きを吸収することのほうが、今後は重要になることを考え、現時点での知識よりも、学ぶ意欲を重要視します
  • コンピュータサイエンスだけでなく、ソフトウェア工学、ライフサイエンス、機械工学など、他の分野についても理解を深めていくという姿勢を評価します
  • 新しい技術の組み合わせによるイノベーションをおこすため、人工知能分野の専門家だけでなく、多様な専門性を持つメンバーを歓迎します


これまでは、この条件は、リサーチャーのみに適用していました。しかしPFNでは、リサーチャーもエンジニアも、分け隔てなく、一丸となって、新しい技術を切り拓いていくことが重要だと考えています。リサーチャーもエンジニアリング的な素養が必要ですし、エンジニアも研究について理解をしていく必要があります。ですので、リサーチャー・エンジニア関係なく、これを応募資格にしようと考えています。

 

また私は、大切な、すべてのPFNのメンバーが、新しい技術を切り拓くために全力を尽くせる環境を作っていくことも重要だと考えており、それは今後も継続的かつ積極的に取り組んでいきます。

 

PFNでは、多様な専門分野を持った人材を募集しています。興味を持ってくださった方は、ぜひご応募ください。
https://www.preferred-networks.jp/ja/job

コミックマーケット93 参加レポート

Taizan Yonetsuji

2018-02-06 11:33:30

コミックマーケット93

PFNでは、2017年12月29日から31日まで、東京ビッグサイトで開催されたコミックマーケット93に我々が開発しているPaintsChainerの企業ブースとして出展してまいりました。

年末にも関わらず、非常に多くの方々にご来展頂き、3日間で1000人を超える方に、プロジェクションマッピングを用いた新しいユーザーインターフェースを体験いただきました。

また、PaintsChainer公式キャラクター「絵愛ちえな」ちゃんのお披露目も行う事が出来ました。


PaintsChainer(ペインツチェイナー)とは

PFNが開発・提供するオンライン線画自動着色サービス。白黒等で描かれた線画ファイルや写真画像をアップロードするだけで、イラスト上の顔や服装、風景等を認識し、完全自動着色または色指定による自動着色をおこないます。

線画に対する自動着色のWebサービス化は世界初で、大きな反響を頂きました。その後、モデルの追加やサイトのリニューリアル等に取り組んでいます。

https://paintschainer.preferred.tech/

 

プロジェクションマッピング上での自動着色

今回のコミックマーケット93のPFNブースでは、紙に書いた絵に色がつくという新たな体験を提供しました。

デジタルデータではなく、実際の紙に描いた線画を専用着色ブースにセットすることで、その線画を4K高画質カメラで読み込み、PaintsChainerが着色し、プロジェクションマッピングを用いて実際の紙に着色されたように投影しました。実際にその場で書いた絵を着色できるということで、時間をかけて力作を描いて下さった方々もおられました。

さらに、着色結果にカラーヒントを与えることで、好きな色に変える機能もプロジェクションマッピング上で提供しました。

例えば、自動着色で黄色に塗られた髪の色を、カラーヒントを与えることにより一瞬にして青や赤など好きな色に変えることができます。

こちらは、もともとWeb版のPaintsChainerにも搭載されている機能ですが、今回は投影により着色された線画紙自体に、絵の具や色鉛筆で着色するかのように色指定ができるインターフェースに作り変えました。こちらもまるで魔法のようだという事で非常に楽しんでいただくことが出来ました。

 

スタイラスペンによって線画に対し直接カラーヒントを与えられるようにし、認識は、テーブルに埋め込んだペンタブレットにて行っています。

 

マンガ向けの着色モデルを限定公開

通常のイラスト向けの着色モデルに加えて、コミケ会場ではマンガ向けの着色モデルも選択できるようにしました。こちらは、今回が初公開のモデルです。

マンガ向けモデルは、Webで無料公開しているイラスト向けモデル(現在は、「たんぽぽ」「さつき」「かんな」の3つのスタイルを公開中)とは異なる学習を行い、マンガが持つセリフ、吹き出し、枠といった特徴に適した着色モデルとなっています。


イラスト用さつきモデルで着色(ノーヒント)マンガモデルで着色(ノーヒント)

(ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰 Give My Regards to Black Jack SHUHO SATO )

こちらのマンガモデルは、現在出版社・デジタル配信事業者と共に実用化を目指しています。

 

漫画版は公開利用行っておりませんが、通常のPaintsChainerの3モデルは今回コミックマーケット93で体験いただいたものと同じものがWeb上で無料でご利用頂けます。是非ご利用ください。

https://paintschainer.preferred.tech/